お久しぶりです。主に特許関連のデータ処理を担当しているBTと申します。
今回は拒絶査定後または特許登録後の流れについてご説明したいと思います。
宜しくお願いいたします。
拒絶査定後
特許出願が審査によって拒絶査定された場合、出願人そこで諦める必要はありません。
出願人は拒絶査定について納得がいかない場合は、特許庁に対して拒絶査定不服審判を請求することが出来ます。
また、この拒絶査定不服審判の請求と同時に出願内容を補正する事も可能で、この場合は拒絶査定不服審判の前に前置審査が行われます。
前置審査
拒絶査定不服審判の請求と同時に出願内容の補正が有る場合、これが実質上出願人にとって最後の補正のチャンスであることから拒絶査定において指摘された拒絶理由に全てについて、その拒絶理由を解消するような大幅な補正を行うことが多くなります。
このため、わざわざ拒絶査定不服審判を行うよりも、すでに審査の過程で内容を理解しているはずの拒絶査定をした審査官が、拒絶査定不服審判を請求と共にした補正内容を確認することで拒絶理由が全て解消しているか否かの判断が容易に可能です。
そこで、拒絶査定不服審判を請求と共に補正があった場合は、拒絶査定をした審査官に補正内容を確認させ、特許査定が可能かどうかの判断をします。これを前置審査と言います。
拒絶査定をした審査官が補正後の出願内容で特許査定が可能と判断した場合は、拒絶査定不服審判を行うこと無く出願人に対して特許査定を通知します。
拒絶査定不服審判
拒絶査定不服審判の請求と同時に出願内容の補正が無い場合、又は補正があっても前置審査の結果拒絶査定をした審査官が特許査定は出来ない(拒絶査定における拒絶理由が解消していないか、補正によって新たな拒絶理由が生じた場合)と判断した場合は、拒絶査定不服審判が開かれます。
拒絶査定不服審判は、3人ないしは5人の審判官(審査官を長年勤めたベテランの特許庁職員の方々)の合議で、拒絶査定をした審査に誤りは無いか、拒絶査定不服審判を請求と共に補正があった場合はその補正後の内容で特許査定が可能か等を判断します。
審判官の判断の結果、主に審決(成立)、審決(不成立)、審査に差し戻しのいずれかの結果が出されます。
審決(成立)の場合は、特許査定と同じですので、出願人は特許登録料と3年分の年金を納めることで特許権を取得できます。
審決(不成立)の場合は、知的財産高等裁判所(東京高等裁判所の特別の支部で、知的財産権に関する裁判を専門的に受け持つ裁判所)に出訴することにより、出願人は裁判で争うことも可能です。
審査に差し戻しの場合は、審査が再度やり直しになります。これは審査の内容に不備や間違いがあった場合にそれを審査のやり直しで正すためですが、審判官が審査官を教育する目的で行われることもあり、出願人にとっては特許になった場合の特許権の有効期間がさらに減ってしまうことになります。
特許登録後
特許出願が審査によって特許査定された後に、出願人は特許登録料と3年分の年金を納めることで特許権を取得できます。
しかし、特許権は一度取得すれば出願から最大20年の間ずっと安泰というわけではありません。最初の3年間を除いてその後の毎年の年金を納め忘れると特許権は消滅しますし、競合者等の請求により特許権が消滅する事もあります。
それらを見ていきます。
特許異議の申し立て
特許登録がなされて特許公報が発行されてから6ヶ月の間は、誰でも自由にその特許登録された内容について異議申し立てをすることが出来ます。
6ヶ月の間に異議が申し立てられた(複数の場合も有り)場合、3人ないしは5人の審判官により異議申し立ての審理及び決定が行われます(異なる複数の異議申し立ての異議の内容が同じだったりすることもあるので、整理分類して同一内容の異議申し立て毎に行われる)。
異議申し立てを認める場合は、その特許は消滅し、特許権は最初から存在しなかったものと見なされます。
異議申し立ても認めない場合は、その特許はそのまま維持されます。
訂正審判
すでに登録された特許について、その特許権者は特許の内容について何らかの不備や後で説明する特許無効審判によって特許を無効にされる可能性が高い場合、特許権者はすでに登録済みの特許の内容について訂正を行う訂正審判を特許庁に要求することが出来ます。
上記の特許異議申して立てで申し立てたれた内容について特許の内容について訂正が必要と特許権者が判断した場合も同様です。
訂正審判は、3人ないしは5人の審判官により審理されて、審決(成立)となった場合は特許の内容は訂正後のものに変わります。但し、訂正後の内容は訂正前の特許の内容を超えるものであってはなりません。
特許無効審判
登録された特許に対して、利害関係者等がその特許がで無効であることを確認するために、特許庁に対して特許無効審判を請求することが出来ます。
無効となる理由は、審査等の過程で拒絶すべき事情があったにもかかわらず特許となった場合等が多いです。
特許無効審判は、3人ないしは5人の審判官により審理及び決定が行われます。
審決(成立)の場合は、その特許は無効となり、特許権は最初から存在しなかったものと見なされます。
審決(不成立)の場合は、その特許はそのまま維持されます。
どちらの場合でも、審決の結果に不服がある場合は、知的財産高等裁判所(東京高等裁判所の特別の支部で、知的財産権に関する裁判を専門的に受け持つ裁判所)に出訴することにより、特許権者と特許無効審判の請求人は裁判で争うことも可能です。
その他の裁判
特許権者はその特許発明について、原則その発明を実施する権利を独占的に有していますが、他人にまねされることもあります。
このような場合は、その他人に対して東京地方裁判所または大阪地方裁判所に対して特許侵害訴訟を提訴することが出来ます。
また、その他人の行為によって損害が生じている場合は、同じく東京地方裁判所または大阪地方裁判所に対して損害賠償請求を提訴することが出来ます。
まとめ
以上、拒絶査定後または特許登録後について説明をしてきました。
今回で「特許とその制度について」の一連のシリーズは終了となります。
長い間有難うございました。
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